今日、ぽわんは川に釣りに行く事にしました。
サワサワと流れる水の音を聞いていると、悲しい事や、嫌な事も、心から流れ出していくようだと、そう思いながら川を眺めていました。
と、その時です。
バシャン!
「わっ!」
ぽわんがおどろいていると、
「一緒に水遊びをしないかい?」
と、川の中から見た事の無い子が、ぽわんに笑顔で話しかけます。
「う…ん」
「よぅし…」
そう言って、その子はケラケラと笑いながら、ぽわんの腕を引っ張ります。
「わぁっ!」
バシャン!
ぽわんを川へ引きこんで、またケラケラと笑います。
「僕は、うるえ。君は?」
そう聞かれて、か細い声でぽわんが答えます。
「ぽわん…」
「ふーん。ぽわんか。良い名前だなぁ。
ねぇぽわん、あそこの岩までどちらが早く泳げるのか、競争しようよ!
それっ!」
ぽわんは何だか、胸がドキドキしてしまいました。
―良い名前だなぁ―
ぽわんはいつも、まわりの子ども達に
「泣き虫ぽわん」
「弱虫ぽわん」
と言われています。
名前だけで呼ばれた事も無ければ、名前を褒められた事もありません。