星空

小話の部屋

【遊 園 地】


ここは閉園の決まった遊園地です。

この遊園地は他所で体験する事が出来ないレアな遊具が沢山置いてあります。
しかしどの遊具もメンテナンスが出来る状態では無さそうです。

「これらの遊具は壊れ、いつか皆の記憶化から薄れていく・・・。」
そう言った運命を辿ると決まっていました。

さて、あなたはそんな遊園地にやって来たようですが、ここへ来た目的は何ですか?

あぁ、なるほど。
「閉園前に楽しみたい」
そうですね。もう少しで閉園しますものね。

では、そちらのあなたはどうですか?

おぉ、なるほど。
レアな遊具がどういったものか知りたかったのですね。

ではお隣の方は?

うん、うん。
その遊具の修理が出来るからやって来た?
なるほど、なるほど。それは素晴らしいですね。

え?
私ですか?

う~ん。そうですね・・・。

お答えしにくいのですが、ここに来る予定では無かったのです。

つまり、何と言いますか・・・。

実はこの最寄り駅で下車する予定は無かったのですが、こちらへやって来た大勢の人の波に流されて電車を降りてしまったのです。

そのような具合で大勢の人が楽しそうにこの遊園地を目指しているのを見ていたら、「彼らが何を楽しみにしているのか?」そんな事が気になってしまい気が付いたらここに来てしまいました。

ん?
一緒に遊びませんか?ですか?

いえ、お誘いを頂いてとても嬉しいのですが私はここの遊具で遊ぶつもりは無いのです。
ただ楽しんでいる人々に興味があって、それらを見ているのが楽しいと感じるのです。

はぁ・・・こんな所まで来たのに勿体ない?

そう言われましても・・・う~ん。困りましたねぇ。

あぁ、そうだ。
ほら、例えばですが、あの急流下り。
私は水に濡れるのが嫌なのです。

それにあのジェットコースターも。
恐ろしくて自分が乗りたいだなんてちっとも思わないのですよ。

とは言ってもですね。
先ほども話をしましたが、皆さんが楽しそうにはしゃいでいる様子を見るのは気分が良いものですね。
楽しそうな笑い声なんかも聞いているだけで私も楽しくなってしまいますよ。

おや?
何の合図でしょうか?大きなラッパ音が聞こえました。

あぁ、閉園記念のパレードが始まるようですね。
それはそれは盛大で大変な混雑具合でしょうね。

あはは、そうですね。
「楽しそうだな」と思う前に人の混雑具合の心配をしましたね。

では・・・そういう事になる前にそろろそここから出ようと思います。

うん?それは勿体ないから最後まで参加した方が良いのでは?ですか?

う~ん。
確かにそうなのですが・・・いえね。

ここへ来てしまった事を考えるとそう悠長な事は言っていられないような気がするのです。
つまり閉園の最後まで残っていると多くの人の波に流されて、私が本当に行きたい場所へ行く電車とは違う電車に乗ってしまいそうな気がするのです。

はい。
こればかりは私の問題なので自分で考えて最善策を取るためにそうしたいのです。
ですから先に駅へ向かって発車まで車内で待つことにします。

それにもし早く出発する車があれば先に乗って出ても良いなぁ・・・なんて考えています。
そう言う具合ですから先にここから出ようと思います。

いえいえ、お気遣いいただきありがとうございます。

はい。皆さん方は最後まで楽しむのですね。
きっと素晴らしいパレードでしょうからそれは良い思い出になるのでしょうね。

では皆さん。そろそろ私は失礼させていただきます。
そうそう。最後までお気をつけてお帰り下さいね。

それでは、またいつか。

次にお会いする日まで暫しの間のさようならですね。

 

 

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